3月30日、開幕直前の稽古場にて、通し稽古をご覧になったN.Y.在住のジャーナリストである北丸雄二さんから、日本版「イン・ザ・ハイツ」の感想や見どころを教えていただきました!

【北丸雄二】
ニューヨーク在住。日米を軸とした社会、政治報道のほか、BSやMBS、ニッポン放送などのラジオ番組でも米国関連のニュース報道・解説を行うジャーナリスト。政治・文学・ブロードウェイ関連の著作や台本の翻訳も数多く手がける。

* * * * * * * * *

「イン・ザ・ハイツ」は、本当の物語。

 イン・ザ・ハイツの舞台であるワシントン・ハイツは、マンハッタンでも一番北のところ。治安が悪くタクシーも行かないような場所で、だからこそ地域の中にあるカーサービスが成り立っている。買い物にも、マンハッタンに行くにも使う。村社会で、教会や地域のコミュニティで成り立っている。アブエラのような昔ながらのおばあちゃんがいて、悪ガキ共もその人には頭が上がらない。

 そんな地域からニーナのように抜け出していくような人が出てくると、地域の夢だったりもする。大学に通うのに家族も一生懸命に何万ドルもの仕送りをして、奨学金も受けて、ステップアップをしていかなくちゃいけない。将来は新たな市長に?というのはそこに住む人々にとって、冗談でもなんでもない。イン・ザ・ハイツの物語は、本当にワシントン・ハイツで起きている出来事が繰り広げられている物語。フィクションは、「歌を歌う」という事だけじゃないかな。


TETSUHARUが創る、日本人でしかできない「イン・ザ・ハイツ」。

 音楽は本当に素晴らしいね。日本人の琴線にふれると思う。歌詞がピッタリはまっていた。最初にラップで登場人物を紹介するところなんて圧巻だよね。キャスティングも見事で、いろんな要素を持っている人がカンパニーをもっと良くしたね。ダンスも、ブロードウェイの彼らは体格が厚いから、肉体をゆすっていれば良いんだけど、日本人でやるとなったら、発想から違う。日本人の体型に合わせたのではなくて、日本人にしか踊れないダンスを創った。ブロードウェイ版も観たけど、あの「オリジナル」と比較して、これは「TETSUHARUさんのイン・ザ・ハイツ」。キレがすごい。群舞が圧巻!

「イン・ザ・ハイツ」のテーマは「HOME」。

 N.Y.には、“白い”N.Y.と、“黒い”N.Y.しかないと思っている人もいるけれど、スペイン語しか聞こえないN.Y.もあるし、黄色いN.Y.もある。皆、独自のアイデンティティ、故郷を持ちながら生活している。昔は「人種のるつぼ」と言われ交じり合って一緒になっていたけど、今のN.Y.は「サラダボウル」。交じり合わずひとつひとつ主張しあって、時には暴動も起きるけれど、全体として良い味を出している。

 そのアイデンティティこそ、誰にも共通するHOME、という概念。ニューヨーカーにもある。HOMEこそ、今を生きる僕達に共通の何かなんだって思う。ふるさとであり、家族であり…。だから、いろいろ思い起こさせる。涙が溢れる。最初にも言ったけれど、「イン・ザ・ハイツ」の物語は、本当の物語なんだってことを観客の皆様には知っていてもらいたいね。ブロードウェイの観客も、行くことのないマンハッタンの北の外れ、ワシントン・ハイツの物語を、初めてこの作品で知ったんだから。

 そして、人間が生き物として主張しあい、ぶつかりながらも、それが群れになり、ミュージカルとして群舞となった時にどんなにカッコイイか!

 日本版「イン・ザ・ハイツ」をやると初めて聞いた時、最初は「そりゃあ無理だよ」って思った。実は今日も、どんなのを観させられるのかって思っていた(笑)。ところが、1幕の最後の所でもう涙が出た。今、一時帰国しているけど、N.Y.に帰りたくなっちゃった(笑)。

でかしたよ!日本版「イン・ザ・ハイツ」!

Broadway Musical IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ 公式ホームページ
Copyright(C) All Rights Reserved. ※ホームページ上のあらゆるコンテンツの無断使用、転載は固くお断りいたします。